家庭教師の宿題の出し方まとめ|科目別のコツは?【東大生が考察】

家庭教師の宿題の出し方まとめ|科目別のコツは?【東大生が考察】

①はじめに

家庭教師として生徒の成績アップに貢献しようと頑張っても、週に1~2回の授業だけでは限界があり、「宿題」によってカバーすることも多いですよね。

宿題を出すメリットには、
・事前に問題を解いてもらうことで授業がより効率的になる
・生徒に予習や復習をしてもらえる
など様々なものがあります。

しかし実際に生徒に宿題を出すとなると、問題の難易度や量など、どうやって出せば良いのか悩むことも多いのです。
そんな意外と難しい「家庭教師の宿題の出し方」について、詳しく解説していきます。

家庭教師で集中的に教えることが多い、「英語」と「数学」、それぞれの科目ごとのポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

②家庭教師が生徒に出す宿題って必要?

中高生の多くは、通っている学校の宿題や塾の課題、勉強以外にも部活や習い事などやるべきことが盛りだくさん。
そんな忙しい生徒さんに、家庭教師が追加で宿題を出す必要はあるのでしょうか。

まずは、そもそも家庭教師が出す宿題が必要なのかという点から考えていきましょう。

宿題のメリット

家庭教師が追加で出す宿題のメリットは大きく分けて3つ。
それぞれ詳しくみていきましょう。

①授業の効率化

家庭教師の週に1度や2度の授業だけでは、教材を進められる量に限界があります。
「教えてあげたいことは山ほどあるのに時間が足りずに困っている」なんて方も多いのではないでしょうか。
しかし、宿題をうまく使えばそうした問題はかなり解消できます。

家庭教師の授業では、生徒に問題を解いてもらう時間にかなりの割合が費やされます。
自分の力で問題を解いてもらうだけなら家庭教師がいなくても一人でも可能。
そこで授業で解説する問題を宿題として出しておけば、授業中の無駄な時間を大きく削ることができます。
問題を解いてもらっていた時間も解説や生徒からの質問への解答に使えれば、授業がかなり効率アップするはずですよ。

ただし生徒に目の前で問題を解いてもらうスタイルには、生徒がどこで躓いているのかを見定められるというメリットもあります。
生徒の理解度や苦手を把握するのは家庭教師として重要な要素のひとつです。
ですから、両方の形式を上手に使い分けることが肝心なのです。

②生徒の理解度の向上

家庭教師が出す宿題のメリットの2つ目は、生徒の理解度を上げる助けになるという点です。

授業でいくら丁寧に教えていても、一度の授業だけですべて覚えることは不可能。
勉強には復習が欠かせません。

宿題を出すことで、授業後にもう一度実践することで記憶の定着を図ることができます。
授業で習ったことを宿題で復習するというサイクルを確立すれば、生徒の成績も大きく伸びていくはずです。

③モチベーションアップ

やる気のある生徒にとっては、家庭教師の授業だけでは物足りないという場合もあります。
比較的時間に余裕があって、もっと勉強したいというモチベーションがある生徒に対しては積極的に宿題を出してあげましょう。
授業中にはなかなか扱えない時間がかかる問題や難易度が高い問題に挑戦させてあげれば、さらにやる気になってくれるかもしれません。

また問題を解いてもらう以外にも、
「単語帳の〇〇ページまで覚えておいて」
「参考書の■■を読んでおいて」
など自学自習の時間にやるべきことを示してあげるのも良いでしょう。

やる気はあっても効果的な自習の仕方が分からないという生徒のサポートも大切な役割です。

宿題のデメリット

家庭教師が追加で宿題を出すことには、残念ながらデメリットもあります。

①生徒の負担になる

学校の課題や部活、習い事など他にやるべきことが多い生徒にとっては、家庭教師から出される宿題が負担になってしまうこともあります。
生徒に過度な負担をかけないようにしましょう。

生徒のスケジュールに合わせて、宿題の量を調整して、宿題が終わらない状況にならないよう工夫することが肝心です。

②やる気を削ぐこともある

宿題の出し方を間違えるとかえって生徒のモチベーションを低下させてしまうこともあります。
生徒が解ききれない量の宿題を出して負担になれば、生徒も不満に思います。

また、量は適切でも難易度が合っていないという場合も要注意です。
難し過ぎる問題を出すと、宿題が解けないことにフラストレーションがたまって勉強が苦痛に感じる生徒もいます。
適切な難易度の宿題を選ぶようにしましょう。

宿題を出さない方が良いケース

家庭教師が宿題を出すことには大きなメリットがあるものの、どんな生徒に対しても有効というわけではありません。
次のようなタイプの生徒には宿題を出さないか少なくした方が良いでしょう。

・一人で勉強をするのが苦手な生徒
そもそも勉強への苦手意識が強く、自宅で一人で勉強することを嫌がる場合もあります。
こうした生徒に無理に宿題を出してしまうと、授業中のモチベーションも下がってしまうことがあります。

・部活に熱心な生徒
学校の部活動で忙しい生徒には、宿題をあまり出さない方が良いかもしれません。
練習や試合などで疲れた状態で無理に勉強しても、効果はイマイチ。
それよりも家庭教師の授業という限られた時間内で集中して勉強する方が良いでしょう。

・学校や塾の課題が多い生徒
家庭教師以外の宿題・課題が多い生徒にも、追加で宿題をやる余裕はないでしょう。
こうした生徒の場合は、宿題を増やすよりも、既に出ている学校などの宿題を授業に活用する方向で考える方が良いかもしれませんね。

宿題をやってこないという状況は、授業の計画も狂いますし、生徒側のモチベーションにも響くのであまり望ましいことではありません。
こうした生徒に対しては、あまり宿題を出さずに指導していくようにしましょう。

一方で、時間に余裕がある生徒や先生に自習時間にやることを管理してもらいたい生徒に対して宿題を多めに出してあげることをオススメします。
ただこうした場合でも、宿題の量や難易度、出し方は生徒と相談して、無理のない形に調整するようにしてください。

③科目別宿題の出し方【英語】

ここからは、具体的な宿題の出し方について科目別に解説していきます。

まずは家庭教師が指導を依頼されることが多い英語からみていきましょう

英語の指導で、宿題を出すことによる効果が特に高いのは、「長文問題」「英作文」といったジャンル。
また、それ以外の「文法事項」などに関しても、その日習ったことの復習を宿題として課すことが有効です。
宿題を出すことでその日の復習をさせることは、英語に限らず宿題の出し方として一番簡単かつ定番だと言えるでしょう。

長文問題の宿題の出し方

家庭教師が英語を指導する場合、長文問題の読解を中心に進めていくスタイルの授業が多いのではないでしょうか。
長文問題はほとんどの試験において出題されますし、数をこなさないとなかなか読解のコツを掴めません。
そのため、家庭教師としても教えがいのあるテーマですね。

一番多い長文問題中心の授業形式は、
「生徒が問題を解いている様子を横で見る→解き終わったら答え合わせ・解説」というもの。
この形式の授業は、定番かつ効果的ではありますが、授業時間が長文を解く時間に圧迫されてしまうという問題点もあります。

仮にひとつの長文問題を15分程度で解いてもらい、同じくらいの時間を答え合わせや解説に使うとします。
そうすると、30分で1問消化でき、2時間の授業では4問の長文問題を教えられる計算になりますね。
これでも十分かもしれませが、問題を解く作業をあらかじめ宿題として出しておけば、よりたくさんの問題を扱えます。
そのため「読むペースや時間配分のコツ、問題の種類別のアプローチがすでに分かっている生徒」に関しては、宿題として解いておいてもらう方が効率的です。

受験が近い生徒などは、授業時間を効果的に使えるように工夫したいところです。

もちろん、授業時間中に生徒が問題を解くことにもメリットはあります。
解いている様子を横で見ることができるので、「生徒の長文を読むペースや問題を解くときの時間配分についての指導」が可能です。
授業中に解いてもらうスタイルだと、家庭教師アドバイスを即座に実践することもできます。

そのため、その日の授業で扱おうと思っている複数の長文問題のうち、半分を宿題としてあらかじめ解いてもらい、残りは当日解くというスタイルをオススメします。
生徒のやる気、学習にかけられる時間の量や、現在の学力レベルなどを考慮して決めるようにしてください。

教材に関しては、生徒が持っているものを利用するのが良いでしょう。
生徒が教材を持っていない場合には、生徒に合ったレベルのものを選んであげてください。
自分ではどの教材がいいか決められない生徒が多いので、いくつかネットで調べて適当な量のものを提示してあげると親切です。

受験生なら、志望校の過去問などを使うのもオススメですよ。
過去問は難しく時間がかかることが多いので、慣れてきたら宿題として出した方が授業時間を活用できます。

英作文の宿題の出し方

英作文の添削は、家庭教師が強みを一番発揮できる指導です。
多対一の形式だと時間がかかる添削も、家庭教師なら一対一で丁寧に対応できます。
英作文を宿題としてあらかじめ出しておくと、授業時間中に添削に時間を割くことができ多くの量を消化できます。
特に、200単語以上の英作文は添削にも時間がかかるため、あらかじめ書いてきてもらった方が良いでしょう。

また、メールなどで事前に提出してもらえれば添削をより丁寧に行うことも可能です。
細かな単語の用法やオススメの表現などは、家庭教師側も調べる時間がないと質の高い指導は難しいですよね。

ただ、長文と同じく、英作文に関しても横で考える過程を見ておくことにはメリットがあります。
日本語のある部分を英語で表現しようとするとき、どこで詰まってしまうかをチェックすることができるからです。
宿題としてあらかじめ書かせておいた場合と比べ、過程が分かっていると生徒がより理解しやすい別の表現方法などを示しやすくなります。

そのため、英作文をあらかじめ書いてきてもらうのに向いている生徒は次のようなタイプ。
・ある程度実力があり、自分一人で英作文を形にできる生徒
・試験などで分量の多い英作文が提出される生徒

長文問題と同じく、生徒のやる気、学習にかけられる時間の量や、現在の学力レベルなどを考慮して決めるようにしてください。
また注意点として、生徒の通う学校や志望校で試験に英作文が出題されるかどうか事前にチェックしておくようにしましょう。
もし出題されない場合は、英作文以外のジャンルの指導に注力したほうが生徒の成績向上につながります。

④科目別宿題の出し方【数学】

続いては、英語と同じく家庭教師に依頼されることが多い数学の宿題の出し方について解説します。

数学を宿題として出すのが向いているのは、
・私立高校受験
・私立大学の試験
・国立大学の二次試験
などで記述式の問題の対策が必要なケースです。

記述を課す難関大の数学の過去問などは、1問解くのに20分くらいかかることもあります。
このような問題は、宿題として事前に解いてもらっておいたほうが効率的です。

もっとも、センター試験などのように最終的な解答だけが求められる試験の対策でも、時間を節約するという点で宿題を出すことが効果的なのは同じです。

例えば、都立高校を受験する生徒の場合、大問1番は小問集合です。
小問は記述式ではないため添削を必要としません。

もちろん解いている様子を横で見ることで生徒の解答方法や手順を確認することができるというメリットはあります。
しかし、より多くの問題を解きたい場合や記述式の問題の方を重点的に指導したい生徒の場合は、小問集合の部分は宿題としてあらかじめ解いてきてもらい、答え合わせと解説に時間をかけた方が良いでしょう。

また、回答の添削以外にも、その日解いた問題の類題を宿題として解かせるのも復習になって生徒の理解の定着に繋がるのでオススメです。

⑤家庭教師の宿題の出し方まとめ

今回は、家庭教師が生徒に宿題を出すときの具体的な形式や注意事項について説明してきました。

宿題を出すことには時間の短縮というメリットがあり、授業中に問題を解かせることには解答作成の過程をチェックできるというメリットがあります。
どちらにも良さがあるのを理解したうえで、生徒のやる気や時間の余裕を考慮しつつ、そして何よりもまずは生徒自身とちゃんと相談して、宿題を出すようにしましょう。

また、「授業時間には料金が発生するのでその時間で問題を解くのはもったいない」と思っている生徒や保護者も少なからずいます。
そのため、授業時間内で問題を解いてもらう場合には、その利点をちゃんと説明することも重要です。